心臓を最大限に鍛える方法についての考察 [高速ペース走(10km)が最強の練習法だと思う理由]
*2017年の記事ですが、あまりにも自分の今の考えと一致してるので再掲!
少し前の記事で、「マラソンは努力の量比べでなく、「限られた脚というリソースをいかに効率的に有効活用できるか」を競う競技だと考えます!」という主張を記事に書きました。
これはある程度走っている人であれば共感していただけることかなあと思ってます。脚というリソースは、無限に使えるものではないですからね。ですので、この脚というリソースを最大限に有効活用して、トレーニングにはげまなければいけません。
そこで、そのような脚リソースの最適な使用という観点から、自分なりに考えている「心臓を最大限に鍛える方法」について考えをまとめてみました。ちょっとごちゃごちゃ言っていて難しいかと思いますが、こういった考察もあるということで参考にしてみてください。一応、机上の空論でなく、過去数年の走った経験データから導き出した結論です。
目次
脚というリソースは使える距離が限られている
これはこちらの記事に書いたとおりです。月間300km程度までは努力で距離を増やせますが、それ以上はそれなりの負荷となる速度で走ると素人にはきついと考えております。ある程度、月間走行距離は限られてくるということです。
心臓は脚が使えないと負荷がかけられない
これも以前書いた記事の通りです。心臓に負荷をかけるためには、脚が絶対必要です。なぜならば、身体の中でエネルギーを一番使う部分が脚であり、これなしで心臓に強負荷をかけることができないからです。いろいろがんばりましたが、脚なしでは、心拍数130程度までしかあがらないのです。
距離あたりの平均心臓負荷(心拍数)を最大化することが、最高の心臓強化方法
上記のような「限られた脚というリソースをいかに効率的に有効活用できるか」という考え方から、自分は心臓を最大限に鍛えるために、以下のようなイメージをもっています。下図のように、月間で走行できる距離は限られてきます。その中でやるべきことは「距離あたりの心拍数の平均値を最大化する」ことだと考えています。下図でいえば、心拍数をしめす赤い部分をとにかく最大化することです。走れる距離(横軸)は月間300km程度と限られています。なので、この中でいかに心臓に負荷をかけて、心拍数を上げて、赤い部分の面積を最大化させられるかが勝負と思っています。
仮説:心臓の負荷は直近10分の使用エネルギー(速さの面積)で決まる?
そして、これが今回の考察で前提とする考えです。これは例えば下図が直近10分間の走行速度をあらわしたグラフならば、この赤い部分の面積に比例/相関して心拍数は決まってくるのではないかという仮説です。これは、適当にいっているのでなく、下記のような経験則から推測して導き出した考察です。
経験則1:いくら高速に走っても、急に心臓に負荷がかかるわけではない
過去の経験から、いくら本気で瞬間的に高速に走っても、心臓に最大限の負荷がかかるわけではないことがわかっています。下記のグラフは200m程度を何度も本気で走った時のグラフです。このときに心拍数は前後していますが、じつは最大心拍数にぜんぜん達していないのです。(自分の最大心拍数は192、このインターバルのMAXは180程度です)。
経験則2:2~3kmぐらい高速で走っていると、心臓負荷が安定してくる
これはも、過去の経験からわかっていることです。下記のグラフのように、3kmや5kmを走ると、最初の1,2kmでは心拍数は上昇の途中であり、最大に負荷がかかっているわけではないことがわかります。負荷が安定してくるのは2.5km程度走った後からです。
このような現象から自分は、「過去何分かの運動エネルギー使用量によって、心臓負荷(心拍数)が決まるのでは?」という推測をたてました。別に10分という数字にこだわっておらず、とにかくある程度の時間蓄積により、心臓負荷が決まると考えたわけです。そう考えて、各練習方法を見ていった場合、どの練習が心臓に一番負荷がかけられるかが下記の考察によってわかってきます。
直近10分の使用エネルギー(速さの面積)を最大化するには?
上記のように、数年走ってきた経験とデータから、心拍数の変化は「直近10分の使用エネルギー(速さの面積)」に比例/相関上昇するという仮説を立てました。(もちろん10分というのは仮での設定で、大体これぐらいという値です)
では、この仮説が正しいとした場合、どのような練習をすると、「直近10分の使用エネルギー(速さの面積)」を最大化できるでしょうか?各練習ごとに実際のデータ記録を持ち出して、その考察をしてみました。
低速走、ジョギング、ロング走
ロング走の場合、自然と低速での走行になってしまいます。練習からロング走を高速で走ったら脚がズタボロになるからです。そう考えた場合、ロング走をずっとやっていたのでは心臓に負荷がかけられないと言えます。なぜならばそもそもぜ絶対的な速度が小さくなってしまうのですから、負荷も下記の心拍数のグラフのように当然のように小さな値となってしまうからです。このグラフだと心拍数が平均して心拍数140ぐらいの負荷しかかけられていません。なので、月間300km走ったとしても、全ての距離でこの低負荷しか心臓にかけられていないことになります。
イメージは下図になります。速度がそもそもあまりでていないので、下図のように、速度面積的にも小さなものになってしまいます。20km以上ですと、本気で走っても有酸素運動の限界(最大酸素摂取量)の速度の90%以下でしか心臓負荷はかけられないと思います。
高速インターバル(100~200m繰り返し走)
高速インターバルの場合は、自分の有酸素運動の限界を超えたような走りになります。このペースで走るには、こちらのページで解説しているような無酸素的なエネルギーを動員しなければなりません。なので、連続して中距離以上を走ることが不可能なのです。実際、高速ではしると、どうしても休憩⇒走行の繰り返しになってしまいますよね。なので、速度グラフとしては下記の図のようなグラフになります。
こちらは時速20kmという、自分の実力からするとあり得ないぐらい高速に何度もインターバルをおこなったときのグラフです。しかし、実は連続走行ができないため、10分間の速度面積的(’灰色部分)には大したことなく、ほとんど負荷(心拍数)が上がらないことがわかります。MAXでも180ですし、平均するともっと低いです。
イメージでいうと、こんな感じです。確かに速度は自分の有酸素的な限界を超えており、100%を超えたエネルギーを使えますが、間のインターバルで休憩をとらなければいけないため、10分間の速度累積をとると大したことないんですね。
高速ペース走(3km)
では、高速ペースである3kmではどうでしょうか。たぶん速度面積的には、この3km走が一番最大に達しており、下の実際の自分のデータでも、心拍数が190近くと限界に近い値になっています。しかし、下記の心拍数のグラフ(赤線)を見ると、緩やかに上昇しているのが見えるかと思います。ここでの問題は、この心臓負荷が最大付近に達するのが「3kmのゴール直前」のみということです。
この問題を、わかりやすく示したのが、下図です。これは「1km走行時」時点での速度累積グラフと思ってください。とすると、下記の図のように、速度的には100%と最大級なのですが、如何せん走り始めた段階ですので、4分程度の速度累積しか溜まっていないんです。すると、この1km走行時ではまだ、心臓に負荷がそこまでかけられていないと言えてしまうのです。この速度累積グラフが、満タンになるのは10分間走った後です。距離的にいうと2.5km走行した後ぐらいでしょうか。つまり、最後の0.5kmぐらいしか心臓に最高の負荷はかけられていないということになります。ですので、3km全体での心臓負荷を平均化すると、実はそこまで大きくないということになってしまうんです、、
高速ペース走(10km)
では、10kmを高速に一定速度で走った場合はどうでしょうか。ここでも先ほどと同じ、「走り始めの心臓負荷が少ない」という問題は起きます。先ほどと同じく、最初の2.5km程度まではそこまで大きく心臓の負荷はかけられていません。しかし、下記の実際のデータの通り、そこから先の7.5kmは安定して一定の心臓負荷をかけられているんです。これが、3kmにはなかった「安定した心臓への負荷がけタイム」です。ただし、3kmほど速度が高速ではないので、100%の負荷とはいきませんが。
イメージでいうとこんな感じです。直近10分間の速度は、3km走ほど速くはないまでも、95%ぐらいとかなりのハイスピードで走行できます。そして、10kmでは自分の場合は40分程度走行していることになりますので、少なくとも30分間は下図のようなかなりの負荷が心臓にかけられていると言えるんです。
だからといって、距離を20kmや40kmにしてくと、今度は速度が落ちて、心臓に負荷がかけられなくなってしまいます。下図のように、速度が低下するため赤い面積部分が下に低下する。そういった意味から、10kmが自分としては最適な心臓に負荷がかかるポイントかなと感がています。
まとめ:心臓を鍛えるためには、10kmの高速インターバルを推奨
結論ですが、上記の考察の通り、心臓の負荷が「過去10分間のエネルギー負荷(速度)の累積)に比例/相関する」といえるのならば、10km程度の高速ペース走が、脚という限られたリソースを最大限に有効活用して、一番心臓に負荷をかけられる方法なのではないかと考えています。
もちろんこれは自分の過去のデータから導き出した結論ですので、人によってこの具合は変わってくると思います。伝えたかったのは「万人に10kmペース走を推奨」するのでなく、「このように過去のデータを考察して、自分に最適なトレーニングを考える努力をすること」です。
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