「ベクトルの足し算・引き算」をシミュレーション/図解で理解しよう![数学入門]
本ページでは数学のベクトルの基礎について、シミュレーターを用いてその意味・定義について解説しています。
今回は「ベクトルの足し算・引き算」についての解説です。ベクトルは向きがあるので、通常の数値の足し算とは少し違います。その辺りについて、詳しく解説します!
目次
ベクトルの足し算を定義
ベクトルの足し算は以下のように定義できます。
\( \vec{a} = (x_a,y_a) \)
\( \vec{b} = (x_b,y_b) \)
とした時、
\( \vec{a} + \vec{b} \)
\( \displaystyle = (x_a,y_a) + (x_b,y_b) \)
\( \displaystyle = (x_a + x_b, y_a + y_b) \)
つまり、単純に成分ごとに足し算をすればいいんです。
3次元の場合も同様で
\( \vec{a} = (x_a,y_a,z_a) \)
\( \vec{b} = (x_b,y_b,z_b) \)
とした時、
\( \vec{a} + \vec{b} \)
\( \displaystyle = (x_a,y_a,z_a) + (x_b,y_b,z_b) \)
\( \displaystyle = (x_a + x_b, y_a + y_b, z_a + z_b) \)
となります。
ベクトルの足し算の図形的意味
上記の通りベクトルの足し算を定義しますが、図にするともっと分かりやすいです。ベクトルの足し算は、「ベクトル\(\vec{a}\)の先にベクトル\(\vec{b}\)を結合したベクトル」になります。
↓がその図です。赤矢印が\(\vec{a}\)、青矢印が\(\vec{b}\)、そして足したベクトルが紫矢印です。赤矢印と青矢印を結合したものが、紫矢印と同一になっていますよね。ベクトルの足し算はこのように、2つのベクトルを結合するイメージで捉えれば簡単です!
ベクトルの引き算は「逆ベクトルとの足し算」
続いてベクトルの引き算の説明です。二次元での定義は↓の通りです。
\( \vec{a} = (x_a,y_a) \)
\( \vec{b} = (x_b,y_b) \)
とした時、
\( \vec{a} – \vec{b} \)
\( \displaystyle = (x_a,y_a) – (x_b,y_b) \)
\( \displaystyle = (x_a,y_a) + (-x_b,-y_b) \)
\( \displaystyle = (x_a – x_b, x_b – y_b) \)
3次元の場合は省略しますが、同様の式になります。つまり、成分同士の引き算をすればいいことになります。このとき実は「\(\vec{b}\)の逆ベクトルを足している」と考えることもできます。途中で出てくる「\((-x_b,-y_b)\)」はまさに\(\vec{b}\)の逆ベクトルですから。
すると引き算も↓のように簡単に図示できます。薄青矢印が\(\vec{b}\)の逆ベクトルです。足し算との違いは、「\(\vec{b}\)を反対にしてから結合する」という事だけです!
シミュレーションでベクトルの足し算/引き算を理解しよう!
ベクトルの足し算/引き算ができるシミュレーターを用意しました!ベクトル\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)の各成分を変えられるので、色んなパターンの足し算/引き算を実験してみましょう!
シミュレーター上は\(\vec{a}\)を赤矢印、\(\vec{b}\)を青矢印、足し算/引き算の結果を紫矢印で表現しています!
引き算の場合は、\(\vec{b}\)の逆ベクトルを薄青矢印で表現して、分かりやすいようにしています!
2次元ベクトル シミュレーター
まずは簡単に2次元の例からです!
- \(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)のx,y成分を変更すると、それに従って計算結果が表示されます
- 演算方式「足し算」「引き算」を選択できます。その違いを確かめてみて下さい
色々値を変えて、足し算・引き算のイメージを掴んでみて下さい!
\(\vec{a}\)成分(赤矢印)
\(\vec{b}\)成分(青矢印)
演算
足し算
引き算
3次元ベクトル シミュレーター
次に3次元の場合です!
- \(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)のx,y,z成分を変更すると、それに従って計算結果が表示されます
- 演算方式「足し算」「引き算」を選択できます。その違いを確かめてみて下さい
色々値を変えて、足し算・引き算のイメージを掴んでみて下さい!
\(\vec{a}\)成分(赤矢印)
\(\vec{b}\)成分(青矢印)
演算
足し算
引き算
ベクトルの足し算・引き算の要点
要点1:一般的に「ベクトルaの大きさ + ベクトルbの大きさ = ベクトルa+bの大きさ」は成り立たない!
最後に補足です。ベクトルの足し算により、ベクトルの大きさは合成されます。しかし、単純な「ベクトルaの大きさ + ベクトルbの大きさ = ベクトルa+bの大きさ」は一般的に成り立ちません。
↓図で考えるとそれが明白です。ベクトル\(\vec{a}\)とベクトル\(\vec{b}\)はともに大きさ2です。しかし、足した斜めベクトルの大きさは明らかに4ではないですよね。斜めの長さなので、明らかに4より小さいはず。
これはベクトルがともに違う方向を向いているからです。ベクトルは向きがあるので、このように大きさが単純な加算ではなくなります。ご注意を!
要点2:ベクトルの引き算結果は、2つのベクトル間を結んだベクトル
上記ではベクトルの引き算は、「\(\vec{a}\)から\(\vec{b}\)の逆ベクトルを足す演算」と説明しました。しかし、ベクトル引き算にはもう一つの意味合いがあります。それは、「引き算結果は\(\vec{b}\)をスタート地点、\(\vec{a}\)をゴール地点として結んだベクトルになる」というものです。つまり↓図の紫ベクトルになります。
何故ならば、↓図のように青矢印\(\vec{b}\)の逆ベクトルと赤矢印\(\vec{a}\)を足すと、b地点からa地点へ移動するベクトルになるからです。
ですので、2つのベクトル間を結ぶベクトルを作りたい場合は、その2つのベクトルを引き算すればよいのです!これは今後も使うので覚えておいて下さい!
↓\(\vec{a}\ – \vec{b}\)で紫矢印が作れる
まとめ:ベクトルの足し算は、2つの矢印を合成すること!
今回は、ベクトルの足し算・引き算について解説しました。どちらとも矢印を組み合わせた足し算がベースになっています。このイメージを図的に捉えておくことが重要です!
次回はベクトルの重要要素である、「内積」について解説していきます!
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