物理入門:「斜面での摩擦力」をシミュレーターを用いて理解しよう!
目次
「斜面での摩擦力」を考察しよう!
前回までに静止摩擦力と動摩擦力について解説してきました。ただ、簡単のために平面での場合のみ考えてきました。
今度は斜面での摩擦力について考えてみます。重要なのは静止摩擦力です。その力によって、どの程度の斜面で物体が滑り始めるかが分かるからです!それでは細かく解説していきます!
前回までの静止摩擦力のおさらい
まず静止摩擦力とは何かについて軽くおさらいします。
最大静止摩擦力は↓のような形で表します。大事なのは垂直抗力Nに比例して、この静止摩擦力の最大値が決まるわけです。
\(最大静止摩擦力 \displaystyle= μN \)
- μ : 静止摩擦力係数
- N : 垂直抗力[N]
この最大静止摩擦力を超えたら、物体は動き出すわけです。
斜面での静止摩擦力
物体にかかる力
それでは斜面での各力を考えていきます。物体にかかる力は↓のようになります。
重力は、以前の記事で説明したとおり、地面と平行/垂直方向の2つの力に分解して考えることができます。そして、平行方向の薄赤色矢印が地面をすべり落ちようとする力となるんです。
この赤矢印の力を角度θを使って表すと、↓のように計算できます。
- m : 物体の質量[kg]
- g : 重力加速度[\(m/s^2\)]
逆に、垂直方向の薄青色矢印は地面への力となり、これがそのまま垂直抗力となります。垂直抗力もθを用いると
となります。これを上の最大静止摩擦力の式に当てはめると
となります。
物体が滑り出す角度
上記の考察で最大静止摩擦力がわかったので、物体が滑り出す角度を考えます。
物体は、角度が低い時には\(進行方向への力 = mgsinθ\)も低いので、動きません。しかし、角度が高くなってくと、sinθにあわせて力が増えていきます。と同時に、\(最大静止摩擦力 = μmgcosθ\)はcosθに従って弱まっていきます。
そのため、最終的に
が一致するポイント以降で、物体は滑り出して行きます。これを解くと、
となります。つまり、静止摩擦係数μがtanθと一致した時に滑り出すのです!色々複雑な式ができましたが、結論は単純なんです。静止摩擦係数μを見れば、滑り出す角度が計算できてしまうんです!
シミュレーターで「斜面での摩擦力」の各力を理解しよう!
それでは上記の計算が成り立つのか、実際にシミュレーターを用いて実験してみましょう!
- スライドバーで角度、重さ、静止摩擦係数を変えられます
- 「各角度で力がどう変化するか」「いつ物体が動き出すのか」を確認してみましょう
- 同時に、垂直抗力やtanθなどの値も表示していますので、各値の変化も観察してみましょう
- リセットボタンで物体を元の位置に戻すことが可能です。ただし再度動きだしてしまうので、適切に角度や静止摩擦力を変えて下さい
各値を変えてみて、物体の動作を観察してみましょう!
- 斜面では垂直抗力が平面より弱く働き、最大静止摩擦力はμmg cosθとなる
- 斜面をすべる方向にかかる重力はmg sinθ
- この2つを組み合わせると、tanθ=μとなったときに物体が動き出すことがわかる
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