数学記号Σ(シグマ)の重要公式の証明/解説[数学入門]
前回記事で、数学でよく使われるΣ(シグマ)記号の意味を解説しました。このシグマを使うと、数列の和を簡単で短い式で表すことが可能になります。
今回はこのΣ(シグマ)に関する重要な公式と、その証明の解説をしていきます。
目次
おさらい:Σ(シグマ)の線形性
シグマ式は前回記事の最後に解説した通り、線形性があります。例えば
\(= \displaystyle 3\sum_{k=1}^{n}(k^2) -2\sum_{k=1}^{n}(k) +5\sum_{k=1}^{n}(1) \)
のようにシグマ式を分解することが出来ます。そのため、
\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n}(k)\)
\(\displaystyle \sum_{k=1}^{n}(1)\)
等の値がわかれば上記式は計算可能なのです!
そこで今回は\(1,k,k^2,k^3\)それぞれについて、シグマをとったときの値を求める公式について説明/証明していきます!
シグマ公式の証明1:定数
一番簡単な公式です。定数aに対して、次の公式が成り立ちます。
$$ \large{ \sum_{k=1}^{n}(a) = an }$$
これは自明ですね。なぜならば、n個の項全てが「a」であるため、その合計は「na」になるからです。
\( = a + a + … + a \)
aがn項ある
\( = na \)
シグマ公式の証明2:1次式
次はシグマ内にkが入っていた時の計算公式になります。
$$ \large{ \sum_{k=1}^{n}(k) = \frac{1}{2}n(n+1) }$$
この証明は、等差数列の合計の証明を考えれば良いです。それは、上記の式を展開すると、
\( = 1 + 2 + 3 + … + n \)
となり、これは「初項1,公差1,項数nの等差数列」と言えるからです。これを等差数列の合計を求める公式に適応すると
↓ \(a_1=1, d=1\)を代入
\(= \displaystyle \frac{n}{2}(2+(n-1)) = \frac{1}{2}n(n+1)) \)
と変形でき、証明完了です。
シグマ公式の証明3:2次式
次はシグマ内にkの二乗があるときの公式です。
$$ \large{ \sum_{k=1}^{n}(k^2) = \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1) }$$
複雑になりましたね。この証明にはちょとしたテクニックを使います。
今、
という式を考えます。そして左辺と右辺をk=1,2,3,…,nと変化させ、全ての合計をとることを考えます。つまり、
\( \displaystyle \sum_{k=1}^{n}\{(k+1)^3 – k^3\} \)
\(= \displaystyle \sum_{k=1}^{n}(3k^2 + 3k + 1) \)
を以下考察していきます。
左辺の計算
上記式の左辺の計算を考えます。今、k=1,2,3,4の場合を考えると、
\( k=1: \CB{2^3} – 1^3 \)
\( k=2: \CR{3^3} – \CB{2^3} \)
\( k=3: \CG{4^3} – \CR{3^3} \)
\( k=4: 4^3 – \CG{3^3} \)
となります。コチラ、色付けしていて通り、それぞれ前後で項が重複しているのがわかると思います。そのため、これらを足していくと「k=iの1項目とk=i+1の2項目で打ち消し合う」という事が起きます。上記の同じ色同士で打ち消し合うわけです。
すると、1~nまで足していった時、最終的に「k=1の2項目(1^2)と最後のk=nの一項目(n+1)^2しか残らない」ことになります。
このため、左辺は
\( = (n+1)^3 – 1^3 \)
といシンプルな形式になります。
右辺の計算
右辺の式は単純に分解して計算していけばいいだけです。前回記事の通り、シグマには線形性があるので
\( = \displaystyle 3\sum_{k=1}^{n}(k^2) + 3\sum_{k=1}^{n}(k) + \sum_{k=1}^{n}(1) \)
となります。上記で証明したとおり、
\( \displaystyle \sum_{k=1}^{n}(k) = \frac{1}{2}n(n+1) \)
のため、
\( = \displaystyle 3\sum_{k=1}^{n}(k^2) + 3\sum_{k=1}^{n}(k) + sum_{k=1}^{n}(1) \)
\( = \displaystyle 3\sum_{k=1}^{n}(k^2) + \frac{3}{2}n(n+1) + n \)
とできます。
左辺=右辺で公式を導く
あとは上記で計算した左辺=右辺で計算すると
\( (n+1)^3 – 1 \)
\(= \displaystyle 3\sum_{k=1}^{n}(k^2) + \frac{3}{2}n(n+1) + n \)
これを変形すると
\( = \displaystyle \frac{1}{3}((n+1)^3 – 1 -\frac{3}{2}n(n+1) -n ) \)
\( = \displaystyle \frac{1}{3}(n^3 +3n^2 +3n +1 – 1 -\frac{3}{2}n^2 -\frac{3}{2}n -n ) \)
\( = \displaystyle \frac{1}{3}( n^3 +\frac{3}{2}n^2 + \frac{1}{2}n ) \)
\( = \displaystyle \frac{1}{3 \cdot 2}n(2n^2 +3n +1 ) \)
\( = \displaystyle \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1) \)
となります。かなりテクニカルな技法ですが、公式を導くことが出来ました!
シグマ公式の証明4:3次式
最後にシグマ内にkの3乗があるときの公式です。
$$ \large{ \sum_{k=1}^{n}(k^3) = \frac{1}{4}n^2(n+1)^2 }$$
これも手順は上記の\(k^2\)のときと同じです。下記式の左辺と右辺を別々に計算して証明していきます。
$$ \sum_{k=1}^{n}((k+1)^4 – k^4) = \sum_{k=1}^{n}(4k^3 + 6k^2 + 4k + 1) $$
左辺の計算
2乗の計算のときと同様であり、前後の項で打ち消し合うので
\( = (n+1)^4 – 1 \)
となります。
右辺の計算
これも2乗の時と同じで公式通りに展開していきます。
\( = \displaystyle 4\sum_{k=1}^{n}(k^3)+6\sum_{k=1}^{n}(k^2)+4\sum_{k=1}^{n}(k) + \sum_{k=1}^{n}(1) \)
ここまで計算してきた\(k^2\)以下の公式を代入して
\( = \displaystyle 4\sum_{k=1}^{n}(k^3)+6\sum_{k=1}^{n}(k^2)+4\sum_{k=1}^{n}(k) + \sum_{k=1}^{n}(1) \)
\( = \displaystyle 4\sum_{k=1}^{n}(k^3) +n(n+1)(2n+1) +2n(n+1) + n \)
と変形できます。
左辺=右辺で公式を導く
ここから先も\(k^2\)を計算した手順と同じです。
\( (n+1)^4 -1 \)
\(= \displaystyle 4\sum_{k=1}^{n}(k^3) +n(n+1)(2n+1) +2n(n+1) + n \)
これを変形して
\( = \displaystyle \frac{1}{4}\{ (n+1)^4 -1 -n(n+1)(2n+1) -2n(n+1) – n \} \)
\( = \displaystyle \frac{1}{4}(n+1)\{ (n+1)^3 -2n^2 -n -2n -1 \} \)
\( = \displaystyle \frac{1}{4} (n+1)( n^3 +n^2 ) \)
\( = \displaystyle \frac{1}{4} n^2(n+1)^2 \)
となります。
上記の公式を利用すれば、複雑なシグマ式も計算できる!
上記の式を使えば複雑なシグマを使った式でも解けるようになります!
例えば、前記事で説明した
は
\(= \displaystyle \sum_{k=1}^{n} (3k^2 – 2k + 5) \)
↓加法性により各項に分離
\(= \displaystyle \CB{\sum_{k=1}^{n}(3k^2)} – \CB{\sum_{k=1}^{n}(2k)} + \CB{\sum_{k=1}^{n}(5)} \)
↓斉次性により係数を外だしにする
\(= \displaystyle \CB{3}\sum_{k=1}^{n}(k^2) – \CB{2}\sum_{k=1}^{n}(k) + \CB{5}\sum_{k=1}^{n}(1) \)
↓ここまで説明してきた公式当てはめ
\(= \displaystyle 3\CB{\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)} -2\CB{\frac{1}{2}n(n+1)} +5\CB{n} \)
\(= \displaystyle {1}{2}n(n+1)(2n+1) -\frac{1}{2}n(n+1) +5n \)
と計算できるわけです!
次回はこの公式を、数学的帰納法で証明!
上記のように、複雑に数式を変形することで、\(k,k^2,k^3\)とそれぞれの次数でシグマ式の解を導くことが出来ます。
\( \displaystyle \sum_{k=1}^{n}k^2 \)以降はややテクニカルな証明となっており、ちょっとややこしいですよね(^^;)
ということで、次回はこの公式を「数学的帰納法」という重要な証明方法を使って導いてみようと思います!
- シグマ計算式は、加法性と斉次性を使って分解し、次数ごとに公式に当てはめれば計算できる
- 1~3次までの公式は覚えておくと良い
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