分子運動シミュレーターで圧力・温度の根本を導こう(1分子編)![物理入門]
前回までの記事で、ボイル=シャルルの法則や状態方程式についてシミュレーターを用いて説明してきました。今回から、この法則や式を使って、分子運動というミクロな世界から「圧力・温度がなぜ発生するのか」を考察して導いていこうと思います!
今回は、一番大事な「分子運動と力Fの関係」について説明していきます!
目次
シミュレーターで分子一つの運動と力積を観察しよう!
さっそくですが、今回のお話を式で解説する前に、シミュレーターで1分子の動きを観察してみましょう!「薄青で塗った壁にどれだけの力を与えるか」を考察するのが今回のテーマです。
- \(10m^3\)の立方体の箱で分子が動くことを想定
- 分子は簡単のため質量m=1とする
- x,y,z方向の壁では反発係数1でエネルギーの消失なく反発する
- 分子が壁にぶつかると0.1秒で壁に一定の力を与えて跳ね返る
- スライドバーでx軸の速度\(v_x\)を指定可能です
- 薄青壁に分子がぶつかると、青く光ります
- 下のグラフは横軸に時間t、縦軸に薄青壁が受けた力を図示しています
- (今回の論議には関係ないですが、y,z方向にも同速度\(v_x\)で分子は動きます)
↓スライドバーでx軸の速度\(v_x\)を変更して、どのように力が働くか実験してみましょう!
↑動的に再生速度を変えられます。左端で0にすると、一時停止となります。
↓横軸=時間t、縦軸=片側壁が受ける力F
このシミュレーターの結果を以下考察していきます。
片側の壁は\(\frac{2L}{v_x}\)ごとに\(2mv_x\)の力積を受ける!
上のシミュレーターでは一変を10m、物体の重さを1kgとしましたが、定式化して考察するため↓のように記号化して考察します。
分子の重さ:m
分子のx軸方向の速度:\(v_x\)
壁にぶつかる頻度
こうした時に、まずわかるのが分子が片側壁にぶつかる頻度です。↓は\(v_x=10\)のときですが、2秒に一回ぶつかっていますよね。
これは当たり前で、片側の薄青壁にぶつかるのに必要な秒数は↓の式のようになります。往復する距離は2Lであり、そこを\(v_x\)で移動するので自明です。
この逆数をとると、1秒あたりに何回壁にぶつかるかが分かります。
壁に与える力積
次に壁に与える力積も考えます。これも完全弾性衝突になるので、↓のようになります。\(-mv_x\)から\(mv_x\)に運動量が変わるので、その差異は\(2mv_x\)になります。
上のシミュレーターでは、m=1で0.1秒で力を壁に与えていたので、その間に壁に与える力は\(\frac{2v_x}{0.1}=20v_x\)となります。これも\(v_x=10\)の時のグラフ↓の力200Nと一致しますよね。
1秒あたりに与える力積
これは簡単です。上で「1秒あたりに片側壁にぶつかる回数」と「一回あたりに壁に与える力積の合計」を計算したので、これをかけあわせれば良いだけです。
\( \displaystyle 1秒あたりに与える力積 \)
= 「1秒あたりに片側壁にぶつかる回数」×「一回あたりに壁に与える力積の合計」
\( \displaystyle= \frac{v_x}{2L} × 2mv_x \)
\( \displaystyle= \frac{m{v_x}^2}{L} \)
「1秒あたりに与える力積」が、そのまま1分子が壁に与える力Fになる!
実は、上記でもとめた「1秒あたりに与える力積」がそのまま1分子が壁に与える力Fになります。
なぜなら、力Fは↓のように瞬間的に発生する力積でも、分子は膨大になるため、結局はならされて、一定の力Fがかっているとみなせるからです。↓の図の場合、1秒ごとに2回、0.1秒800N=80の力積がかかっていますので、平均すると80*2回=160Nの力が常時かかっているとみなせるんです!
まとめ:分子一個あたりに片側に与える力Fが求まりました!
今回は、1分子が単純に完全弾性衝突する運動を想定して、壁に与える力積を求めました。「壁に当たる頻度」と、「一回あたりに壁に与える力積」を考察していけば、1分子が壁に与える力Fは↓のように求まります。
\( \displaystyle \frac{m{v_x}^2}{L} \)
次回はこの考察結果を使って、分子全体で作られる圧力Pを求めていきます!
- 壁から跳ね返る時、2mvの力積を与えているはずである
- その力積に、1秒あたり何回ぶつかるかを乗算すれば1分子が与える平均の力Fが求まる
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