熱容量の概念をシミュレーターを用いて解説![物理入門]
目次
熱容量とは何か?を解説してききます!
前回の記事で、熱の移動/熱平衡について説明しました。物質間で、熱の移動が発生し、温度が同じになるまで熱の移動がおきます。このときの熱の流れは必ず「高温→低温」という方向になります。
ただ、渡した熱の量に対して、どれぐらい温度が上がるかは物質によって違います。これを決めるのが熱容量です。今回はこの熱容量を、シミュレーターを用いて解説していきます!
物質の「大きさ」「性質」ごとに、温度の上がりやすさが違う
前回の熱移動の例では、両物質の熱の上がりやすさ/下がりやすさが同じ例の説明をしました。なので、↓のように100度と0度の物質をくっつけると、50度で熱平衡となっていました。
しかし、物質はその「大きさ」「性質」によって上がりやすさが違います。例えば、同じ材料の物質でも、大きさが違えば上がりやすさは違います。例えば低温側の物質が10倍大きかったら、温度は上がりにくくなるはずですよね。
また、物質の材料によっても上がりやすさが全く違います。水と金属、その他気体の種類によって全く温度の上がりやすさは違うんです。
「熱容量」の定義
上記のように物質の「大きさ」「性質」によって、温度の上がりやさ/下がりやすさは異なります。そこで、物理の世界では熱容量Cという記号を使って、温度の変化のしやすさを表現します。熱容量の定義は↓の通りです。
熱Q(J)によって、物質の温度が⊿Tだけ変化したとき、
\(熱容量C (J/K) \displaystyle = \frac{Q}{⊿T}\)
これは、温度を1度変化させたときに、必要な熱Q(J)の量になります。温度が変化しにくい物質だと、熱容量Cが大きくなります。逆の言い方をすると、熱容量が大きいほど、少ない温度変化⊿Tで多くの熱Qを溜め込めるわけです。つまり、熱容量=熱を溜め込める容量という意味合いなんです。熱容量の単位は必要エネルギーJを温度Kで割っているのでJ/Kとなります。
上位の式を変形すると↓のようになります。これは、⊿TにCを乗算すると、必要な熱Qが求められるという意味です。
\( 熱Q = C⊿T \)
- C : 熱容量
- ⊿T : 温度変化[T]
このように、熱容量Cは熱Qと温度変化⊿Tの比率を表す大事な数値なんです!
比熱の比率によって、熱平衡の温度が変わる!
熱の移動は、両方の温度が同じになるまで継続します。しかし、↑の通り熱容量Cによって、温度の上がりやすさは異なります。ただ、高温物質が渡した熱と、低温物質が渡された熱の量は同等になるはずなんです。この関係性を式にすれば、熱平衡の温度は求められます。
ここで、高温物質を1、低温物質を2と表わし、それぞれの熱容量を\(C_高\)と\(C_低\)とします。また、初期温度を\(T_高、T_低 \)と表わし、平衡温度を\(T_平\)とします。
このとき、「高温物質が渡した熱Q=低温物質が受けた熱Q」なので、↓のような式で関係性を表せます。
↓
\( C_高(T_高 – T_平)= C_低(T_平 – T_低) \)
この式を解くと
\( T_平 \displaystyle = \frac{C_高 T_高 + C_低 T_低}{C_高 + C_低} \)
- C : 熱容量
- T : 温度[K]
となります。この式を解くことで、2つの物質の熱平衡での温度が求められます!これは2つの比熱の比率で初期温度を足し合わせた値になります。
ちなみに\(C_高=C_低\)とすると、分母分子のCが消えて
となります。つまり、熱容量が同じなら、熱平衡の温度は両方の温度の中間になるんですね。
シミュレーターで熱容量の意味を確認しよう!
上記で説明した熱容量を、シミュレーターを使って理解しましょう!
- 100度の高温の物体と、0度の低温の物体があります
- スライドバーで2つの物質の熱容量(\(C_高,C_低\))を変更出来ます
- 結合/分離ボタンを押すと、右側の低温物体をくっつけたり離したりできます
- それによって熱の移動が起き、↑で説明した熱平衡温度になることを確認しましょう
- 物体の温度表示として、「赤/青のグラデーション色で示すモード」「分子の動きで表示するモード」の2つを切り替えられます
- リセットで状態を初期化し、最初から実験できます
↓2つの熱容量(\(C_高,C_低\))を変えて、熱平衡となる温度を確認しましょう!
温度表示色表示 分子表示
↑動的に再生速度を変えられます。左端で0にすると、一時停止となります。
まとめ:熱平衡温度は2つの物質の熱容量で決まる!
最後にまとめです。物質の温度の上がりやすさは、物質の「大きさ」「性質」によって大きく異なります。そこで、物理では↓のような熱容量Cという記号をつかって、それを数値で表します。
\(熱容量C \displaystyle = \frac{Q}{⊿T}\)
- Q : 熱[J]
- ⊿T : 温度変化[K]
この比熱によって、熱平衡の温度は決まります。具体的に、高温物質と低温物質の平衡温度は↓で計算できます。2つの物質の熱容量の割合によって、平衡温度が決まるんですね!
\( T_平 \displaystyle = \frac{C_高 T_高 + C_低 T_低}{C_高 + C_低} \)
- C : 熱容量[J/T]
- T : 温度[K]
今回説明した熱容量、もっと細かく分解して表すことが可能です!次回はその部分を説明していきます!
- 熱容量は、物体の温度の上がりやすさ/下がりやすさを表す数値
- 熱容量の比率で、2つの物体を合成した時の温度が決まる
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