「差別/区別」の有効性/問題点とその意味を数値シミュレーターを用いて考えてみよう!(2/2)
今回は前回に続いて、「差別/区別」について考えていきます。ちょっと際どい話ですが、その意味合いを理解するのは物凄く重要なことだと思いますので、シミュレーターで表現し、その有効性を数値で表せるようにしてみました。
前回はどちらかというと「差別/区別の有効性」についてお話しました。情報や時間が限られた場面では、どうしても差別/区別的な判断が有効的になるという話です。
今回は、「差別/区別を続けていくと、長期的には最適にならない」という話です。差別/区別がなぜ問題なのかを、シミュレーターを使って示していきたいと思います!
目次
おさらい:今回シミュレーションの説明
詳しくは前回記事で書きましたが、軽くだけおさらいをします。
ルール1. 各点が接触したとき、中心の色が同じなら+1、違うときは-1となる
↓のように各点は中の色と、外の色の2つがありますが、重要なのは中身の色です。
接触した2点が同色だった場合 → +1点
接触した2点が同色だった場合 → -1点
ルール2. 外部色で中心の色の比率が変わる
外部の色によって、内部色の比率が違うようにしています。
色によって中身の色の比率が変わってくるという状況です。
ルール3. 各点は接触を拒否できる。ただし、各点は他点を外部色でしか識別できない。
各点は思考をして、ぶつかったときに接触するかしないか決めます。2点どちらかが拒否した場合は、接触が発生しません。接触しなかったときにはスコアはプラスにもマイナスにもなりません。
ただし、各点からは外部色しか見えないという状態になります。ですので、各点から見ると、↓のような状況になります。他点の外部色はわかるけど、中身の色は見えないわけです。
このようなルールでシミュレーションを動かしていきます。
シミュレーション3:「全員が」経験により外部色で差別/区別を行う場合
さっそくですが、シミュレーターを使って実験してみましょう。今回は、前回記事の差別/区別的判断の拡張です。
差別/区別の判断基準
前回の記事と同様ですが再掲です。各点が↓のように
2)5回接触時に「それまでの合計がマイナスになっている色に対しては、接触すべきではないと差別/区別」をする。
3)以後は、↑の判断基準で、接触する色/しない色を判定して行動していく。
前回と違って、紫色グループだけでなく、全グループが差別/区別的な動きをします。
差別/区別を用いたシミュレーター(全グループ)
今までと同じように、スタートを押してシミュレーターを動かしてみましょう!遅いので、↓のバーで再生速度調整してみて下さいませ。
結果考察
前回と同様に差別/区別的に賢く動く場合ですね。結果は↓のようになります。全体的にかなり得点が高くなっています。
グループ色ごとで、得点に差がでるのは、前回も述べたとおり「中身の色と中身の色の相関が高いほど、外見から正しく判断されやすくなるため」です。青色点は100%中身が白色、赤色点は100%中身が黄色なので、統計的に必ず正しく判定されます。
それに対して、緑色/灰色は1/4の確率で間違うため、機会損失が生じるんですね。本当は接触したら+1もらえるのに、外見で判断され、接触NGと判断されてしまうのです、、、差別的ですがこのような状況では仕方のないことなのです><
さらにいうと、紫色が最下位になります。これは中身の色と外見の色に全く相関がないため、誤った推定で除外をたくさんされるためです。
この結果から、「短期的には、情報が限られた場面では、中身がわかりやすいような外見となることが重要になる」ということがわかります。これは前回も述べたとおりです!
シミュレーションルール追加
差別/区別的な判断では↑のような状況になります。時間と情報が限られた状況ならこうするしかないのです。
しかし、現実では「時間をかけて中身や情報を知っていく」ということがおきますよね。外見だけでなく、時間をかけて中身まで理解していく、、、長期的にはそのようなコミュニケーションのほうが大事になってくはずですよね。
ということで、そのような状況に近くするために、↓のようなルールを追加します。
ルール4. 各点は一度接触した結果を覚えておき、同じ点と接触するときには中身の情報を使える
これは、「中身を知るため、一度とにかく接触して相手の中身を知る」という方針です。一度接触し、その結果から相手との相性を覚えておけるということですね。
一度密に接触しなければいけないため、このルールを使って動くには時間がかかります。短期的に見たら、無駄に接触して得点がマイナスになるため、得策ではありません。しかし、長期的にみると、相手の中身を知れたことで、出来るだけ多くのプラスの機会を逃さないようになるはずなんです!
シミュレーション4:とにかく接触して、中身を理解して長期的な最適解を目指す
それでは、上記のルール4にのっとった方針で動くシミュレーションを動かしましょう。この戦略では、差別/区別をせずにとにかく一回目は接触します。
そして、中身を理解をした後には、「中身の色が一致したものとは接触し、不一致のものとは接触を拒否する」という動きをします。
それでは、実際に動かしてみましょう!
結果考察
短期的には得点が伸びないが、長期的にみると得点が最大化していく
上記のシミュレーターを実行すると↓のようなグラフになります。
まず初期の伸びは低いです。なぜなら、とにかく全員と一回目の接触するためにつねにぶつかっているので。ですので期待値は0になります。短期的にはこの戦略は弱いです。
しかし、その後、2回目以降に同じ点とぶつかる時には、前回の情報が使えるようになります。それゆえ、以後は最適な情報が使えるようになります。
実際に、シミュレーション3の戦略は合計点4100でしたが、今回は4900を超えています。短期的な経験からの推測で判断するのではなく、中身を知ろうとすることで、機会を逃さずに接触できるようになるわけです!
とにかく各点と差別なく接触しようとするため、各点の差異/格差がなくなる
また、もう一つ重要な性質は、「各点の得点の差異/格差がなくなる」という点です。前回の差別/区別戦略での結果と見比べてもらえばわかりますが、各グループ/各点の点数差異がほぼなくなっています。
これは、外見で一切判断していないから、当たり前ではありますが。この性質も重要です。全体の得点(効用)は高くても、格差が激しい状況は問題がありますよね、、、一部の人だけが幸せになる状況が発生すると、不平等感から裏切りや妬みが発生しやすくなって、問題があるからです。
その点、この「とにかくぶつかって中身を知る」という方式では、そういった格差も生じません。全体の得点も高くなり、そして全体の格差も限りなく低くなるんです。
差異/格差戦略とは排他となる戦略
もう一つ重要なことは、「シミュレーション3の差別/区別戦略とは、基本的に相容れず、排他的な戦略になる」ということです。差別/区別をするということは、その後一切接触をしないということになります。ですので、この「とにかく接触して中身を理解する」という戦略とは相入れないものとなります。
どちらの戦略を選ぶかを決めなければいけないということですね><
まとめ:差別/区別は情報が限られた場面/短期的な場面では有効、しかし長期的にそれを行い続けると大きな機会損失となる
最後にまとめです。今回はシミュレーターを用いて、「差別/区別」の有効性/問題点を示しました。
差別/区別的な戦略は、短期的で情報が不足しているような状況では非常に有効です。というより、そうせざるを得ない状況も多いと思います。そういう状況では、外見等のわかりやすい情報から、統計的な判断をして、とにかく少しでも得になるように動くことが重要になります。ただし、それによって格差や不条理なども発生しやすくなります。
そして、あくまで一部の情報から判断しているだけではないので、長期的には決して最適ではないはずです。変な偏見/差別/区別的な判断は自分や他人の得点(効用)を下げてしまうことになると思います、、
そして、それとは逆で、とにかく中身を知ろうとする戦略は長期的には有効なはずです。情報を得るためにとにかく接触することは、短期的には最適戦略ではないはずです。しかし、長期的には中身を知ることで最適な判断ができるようになります。
結果的に最終的には差別的/区別的な戦略より得をするはずです。状況によりますが、格差や不条理な判断もなくなっていくはずです。
そして、基本的にはこのドチラの方針で動くかは、排他的に決定しないといけません。差別/区別的に動いたら、中身をしれないし、中身をしったなら差別/区別的に動く理由はありませんから。
「差別/区別的は悪」みたいな言い方をよくされますが、限られた状況ではどうしてもそうせざるを得ません。一切の偏見も差別も区別もしなかったら、多くの初めての人に会う日常では暮らしにくくなる気がします、、、
そうではなく、状況を判断して、「短期戦略で差別/区別的に判断して動くべきか、長期戦略で中身を知るように動くべきか」を選択していくのが大事だと思います!
- 長期的に考えると、見た目で判断するよりも、本質を見て行動するほうがより良い成果が得られるようになる!
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